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日本料理の食卓作法2-B

手書きだった仕事をワープロでするようになり、それがPCに代わってずいぶん経ちますが、いまだに辞書を引いています―。
今のソフトは単語を漢字変換するとき、意味もずらっと並べてはくれるのですが、どういうわけか最終確認は辞書でしてしまうんですね:笑
さすがに広辞苑は仕事場でめったにあけませんが、それでも「漢語林」と「国語辞典」「食物辞典」の三冊は常備しています。

そういえば学生のころ、辞書の拾い読みとか大好きだったな~。
出版社によって内容が違うのも面白かったし、授業中に辞書に熱中してて、先生の話をまったく聞いていないときもあったっけ…本末転倒っ?(←ダメダメじゃん:笑)
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日本料理の食卓作法2-B

「会食前の予備知識」 ~どんなものが出るのかな?~

3.お椀② お椀の要素

「満月豆腐 蛤吉野打ち 順才 小メロン 口柚子」
「ふかひれ 帆立新丈 さや 新銀杏 吉野打ち海老 椎茸 赤ピーマン 口柚子」
「菊花大根 海老 百合根 もって菊 梅肉」
「胡麻豆腐 松茸 銀杏 小柱 人参 栗 口柚子」


Img_0097_1 料理人の腕の見せどころであり、最も季節感を表す料理の一品である「お椀」は、五つの要素で出来ています。
たとえば、ある年の皐月(五月)のお椀が、以下のようなものだったとしましょう―。

  「牡丹鱧 揚げ茄子 順才 梅肉 澄まし仕立て」

これを、五つの要素に当てはめると、次のようになります。
 1:椀種(わんだね)→お椀の主役=「牡丹鱧(ぼたんはも)」
 2:椀妻(わんづま)→お椀の脇役=「揚げ茄子(あげなす)」
 3:青味(あおみ) →季節のあしらい=「順才(じゅんさい)」
 4:吸い地(すいじ)→出汁を調味したつゆ=「澄まし仕立て」
 5:吸い口(すいくち)→季節をあらわすアクセント=「梅肉」


そして、この五つの要素をバランスよくまとめて、お椀の中が一つの景色となるようにするには、料理人の技量が問われるわけですね―。

たとえば食材の組合せにしても、初夏の魚である「鱧」に、青味として春に使われる「こごみ」を合わせたりはしませんし、秋を表す「萩新丈と焼松茸」の椀種に、吸い地として春に使われる「ピースのすり流し」を張ることも無いのです。
また、約束ごととして「鱧」には「梅肉」、「すっぽん」には「露生姜」などという組合せも知っていないと困ります。
お椀が難しい、と言われるのは、その辺りもあるのでしょう―。

1:「椀種」
お椀の主役ですから、季節ごとのはしりや旬の材料が多く、白身魚、豆腐類、すり身、鶏や鶉(うずら)などが使われます。
盛り付け前にはそれぞれがきちんと調理され、味をつけられていますから、吸い地の中で煮込むようなことは無く、また、吸い地が濁るようなものを使うこともありません―。

2:「椀妻」
主役を引き立てるための脇役ですが、椀種と同じように盛り付け前に調理されています。
そしてやはり吸い地を濁らせるものを避けますので、野菜、きのこ、海藻類などが多く使われます。

3:「青味」
椀種と椀妻を盛り込んだ上や手前に、あしらいとして盛り付けられていることが多いものです。
字の通り、青いものだと「軸菜」「つる菜」「芽かぶ」「蓮芋」「星おくら」「結び三つ葉」などなど…。
他にも「花弁人参大根」や、「三色野菜吹流し」などの場合もあります。

4:「吸い地」
吸い地は、料理人が毎日ひく、「出汁(だし)」をもとに作ります。
ほとんどは、上質の鰹節と昆布でひいた出汁を調味した「澄まし」をはりますが、季節によっては、グリンピースの裏ごしを出汁ですりのばした「すり流し」や、出汁に大根や蕪をすりおろしたものを混ぜ、薄くとろみをつけた「みぞれ仕立て」などにすることもあります。

この「吸い地」、一口飲んで「ん?薄いな…」と思う方が多いかもしれません。
しかし、一口めでちょうど良い味加減で作ってしまうと、二口三口と飲んでいくうちに、「あれ?ちょっと濃いかな?」となってくるのですね。
そのため、一椀飲みきったときに「ちょうどいい」と思う味付けになっています。
また、味を感じるときの「返り味」というものを考えて作られていますが、これについてはまた後でお話しましょう―。

「出汁」は、毎日同じ味でひけるようになるまでには30年かかる、と言われています。
元が生き物である昆布や鰹節は毎回同じものではありませんから、毎日同じ作業で出汁をひいても、おのずと味が違って当然ですよね―。
それを、いつでも同じ味でひけるようになるというのは、実は凄いことです:笑
ウチでも、煮方の料理人が毎朝ひいていますが、休みの日に他の料理人が代わると、調理場からの出汁の香りが違います。
基本的に、すべての料理に何らかの形で使われるものですから一番の要ですし、それだけに大変な仕事ですね。
この出汁を調味した「吸い地」は、今でも毎日お椀にはる前に、必ず板長に「あたりをみて」もらうのです。

5:「吸い口」
お椀のふたを開けた時、ふわっと立ち昇る出汁のいい香りとともに、柚子や木の芽の香りがアクセントになっていたことはありませんか?
盛り付けの一番上に、小さい何かが飾りのようにちょん!とあると思いますが、それが「吸い口」です。

「吸い口」という言葉は、椀のふちへ箸でよせて、それを通して吸い地を飲むことから使われているものですから、まずは一口出汁を味わい、その後で吸い口を通してもう一口飲んでみてください。
また違った美味しさが味わえることでしょう―。

吸い口は、別名を「鴨頭(こうと)」とも言います。
これは、吸い口によく使う「柚子」を丸く切った形が、鴨の頭の天辺のようだから、というので名づけられたようですが、当て字で「香頭」と書いたりもするようです。

何度も言いますが、お椀は季節感を表す料理ですから、実はこの吸い口が大きな意味を持っていたりするんですね―。
柚子はよく使われるものですが、これも季節をあらわす大切なアイテムですから、時季によってさまざまに使い分けられます。

たとえば、まだ実が若い青柚子の時季は、苦味がありますので少しだけ削いで使う「削ぎ柚子」や、細く切って使う「一文字」や「松葉柚子」とします。
また、花の時季は「花柚子」を使ったりしますし、熟してくると大きく切って使ったりしますから、蓋を取って吸い口を見ただけでも、季節がわかるようにしてあるんですね―。

他にも、季節のものとして「木の芽」「紫蘇」「茗荷」「青山椒」などがよく使われていますが、これらは「香気」を楽しむものと言えるでしょう。
この他には、吸い地の味そのものに影響のある「吸い口」があり、それは例えば「溶き辛子」「胡椒」「粉山椒」「露生姜」「山葵」などがこれに当たります―。

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